2015年9月4日
欧州静脈経腸栄養学会(ESPEN 2015)にて
オルニチンに関する研究を発表
協和発酵バイオ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小谷 近之)は、L-オルニチン*1を含む食品の摂取が日本人高齢者の褥瘡*2改善効果を示すことを、久留米大学および大牟田中央病院との共同研究において見出しました。この研究成果を2015年9月5日~8日に開催される欧州静脈経腸栄養学会(ESPEN 2015)において発表します。
<発表の概要>
日時 | 9 月 6 日(日) |
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場所 | The international Congress Centre of Lisbon (CCL) , Lisbon, Portugal |
発表番号 | SUN-PP175 |
タイトル | Long term supplementation with L-Ornithine enriched nutrition in Japanese patients with pressure ulcer |
<研究の概要>
褥瘡は低栄養状態の高齢者に見られる、いわゆる床ずれのことですが、本邦で大きな問題となっています。近年、褥瘡の治療については物理的な処置に加え、体たんぱく合成に関与する栄養の補給が推奨されています。我々は、アミノ酸の一種であるL-オルニチンの投与による褥瘡モデルラットの創傷治癒促進効果を先行研究において報告しており、本研究では、日本人高齢者の多様な部位の褥瘡に対するL-オルニチン補給の効果を検討しました。その結果、1日あたり2.5gのL-オルニチンを8週間摂取することにより、褥瘡の重症度を表すDESIGN-R®合計点が、試験開始時と比較して全症例で低値を示しました。また、筋たんぱく質の分解指標である尿中3-メチルヒスチジンの全例の平均値は、試験開始時と比較して、摂取8週後に減少する傾向がみられました。以上より、L-オルニチンの摂取が、侵襲に起因する筋たんぱく質の異化を抑制し、褥瘡の改善に有効である可能性が示唆されました。
協和発酵バイオは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。
<用語説明・文献>
*1 L-オルニチン: アミノ酸の1種。生体内では遊離の非タンパク構成アミノ酸として存在しています。下垂体を刺激し成長ホルモンの分泌を促すことや、肝臓のオルニチン回路の成分としてアンモニアの解毒に関わること、またポリアミンの前駆体となることなどが知られています。
*2 褥瘡:寝たきりになることなどによって、体の圧迫されている部分の皮膚がダメージを受けることをいいます。一般的には床ずれ(床擦れ)とも言われます。
文献:「L-オルニチン含有食品摂取による日本人高齢者の褥瘡改善効果」
日本臨床栄養学会雑誌. 2014; 36 (4): 182-187.
大会リンク:欧州静脈経腸栄養学会(ESPEN 2015)