2016年03月22日
英文誌Journal of the International Society of Sports
Nutritionにおいて
シトルリンに関する研究を発表
協和発酵バイオ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小谷 近之)は、運動前(プレワークアウト)のシトルリン*1経口摂取が健常成人男性において運動パフォーマンス向上作用を示す事を見出しました。この研究成果がJournal of the International Society of Sports Nutrition に掲載されました。
協和発酵バイオは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。
<発表の概要>
【L-シトルリンと研究目的】
近年、NO*2が運動パフォーマンスを向上させることが報告されており、プレワークアウトに摂取することでNO産生を促すサプリメントが注目されています。L-シトルリンは遊離アミノ酸の1種であり、血管内皮においてL-シトルリン-NOサイクルを構成し、NO産生を介して血管の機能維持に重要な役割を果たしています。よって、L-シトルリンはNOの前駆体として働き、NO産生を介して運動パフォーマンスを向上する作用が期待されます。そこで、プレワークアウトのL-シトルリン摂取が運動パフォーマンスを向上させることができるのか検討しました。
【研究の概要】
日頃から運動習慣があり、運動機能の高い20~30代の男性を対象にプラセボ対照二重遮蔽クロスオーバー試験を実施しました。プラセボもしくはL-シトルリン2.4 gを8日間経口摂取させ、エルゴメーターと呼ばれる自転車型運動機器による4 kmのタイムトライアルを実施し、走破時間、血中のアミノ酸濃度、単位酸素消費量当たりに発揮できる筋力(酸素利用効率)、運動に関する主観的な指標(VAS*3)等を測定しました。その結果、L-シトルリンの摂取により、プラセボ摂取時に比較して血中のL-シトルリン及びL-アルギニン*4濃度の有意な増加、走破時間の有意な短縮、酸素利用効率が上昇する傾向が示されました。主観的な指標においても「筋肉の疲れ」と「集中力」に関して有意な改善作用が確認され、「全体的に楽に漕げた」と感じる傾向にありました。以上より、プレワークアウトのL-シトルリン摂取は、持久的な運動パフォーマンスを向上させることが明らかとなりました。
【研究成果の意義】
本研究は、L-シトルリンの経口摂取がヒトにおいて持久的な運動パフォーマンス向上作用を有することを見出した有用な知見となります。また、主観的な指標においても改善作用が見出され、プレワークアウトのL-シトルリンの摂取は体感を伴って運動パフォーマンスを向上させることが初めて示されました。これらのことから、L-シトルリンは競技力向上を目指すランナーなどにとって非常に有効な素材であると考えられます。
<用語説明・文献>
*1 シトルリン(L-シトルリン): アミノ酸の一種であり、血管を拡張し血流を促すことで、冷え性改善、運動パフォーマンス向上作用などが知られています。L-アルギニンよりも効率的に体内のL-アルギニン濃度を高めます。日本国内では食品として使用されています。
*2 NO(一酸化窒素): 体内の血管の細胞で日々産生されている物質で、血管拡張作用を始め様々な生理作用が知られています。
*3 VAS: Visual Analogue Scale、視覚的評価スケールともいい、個人の主観的な感覚を評価する方法です。
*4 アルギニン(L-アルギニン): アミノ酸の一種であり、NOを産生して血管を拡張し、血流を促す事が知られております。
文献:Journal of the International Society of Sports Nutrition. 13:6,2016.