ジペプチドとは
タンパク質の構成成分であるアミノ酸が二つつながったものをジペプチドと呼んでいます。ジペプチドには、アミノ酸単体では見られないような機能を持つものが数多く確認されています。
アミノ酸を直接つなぐ酵素を発見
協和発酵バイオでは枯草菌 (Bacillus subtilis) からジペプチド合成活性をもつ酵素を発見しました。この酵素は多くの種類のアミノ酸に反応し、さまざまなジペプチドを合成する性質を持っています。
アラニルグルタミンの工業的製造法を確立
これまでのジペプチドの製造法はいずれも製造効率やコストの点で問題がありました。しかし、当社が発見したアミノ酸二つを直接結合する酵素と、当社のアミノ酸発酵の技術とを組み合わせることで、これまでにない効率的で安価なジペプチドの生産システムを構築することができました。さらに、このジペプチド合成酵素の性質を利用することで、さまざまな種類のジペプチドを製造することが可能となります。
本生産システムを活用した初の例としてアラニルグルタミンの工業的製法が確立されました。グルタミンは、栄養成分として有用なアミノ酸ですが、酸や熱に不安定で水溶性製品には使用できませんでした。しかし、アラニンとグルタミンのジペプチド=アラニルグルタミンとすることで、安定性、溶解性を改善することができ、医療や栄養分野での幅広い応用が期待されています。
“ジペプチド・ワールド”を展開
ジペプチドは、単体アミノ酸にない物理的性質や新たな機能を付加することが可能であり、アミノ酸以上の応用範囲が期待されます。また、今回開発した画期的なジペプチドの製法により低価格での供給ができることで、さらに用途が拡大すると考えています。協和発酵バイオでは、ジペプチドを“アミノ酸の限界を超える次世代のアミノ酸”と位置付け、多くの研究者や企業と共同してジペプチドの開発を進め、“ジペプチド・ワールド”を展開していきたいと考えています。
参考文献
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